朝日新聞1月5日 コラムから

2014.01.05
モエレ沼公園 ガラスのピラミッド
今年、考えなくてはならないことー福島はあれから何も変わっていない。汚染水は流れるがまま。福島に残ったひとも他の地で避難しているひとも必死で前に進もうとしているのに。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
(ザ・コラム)核のごみ 見えない、でも見つめる 有田哲文
 原子力発電をどう考えるかで、いちばん根っこにある問題は、核のごみをどうするかである。脱原発を目指すにせよ、目指さないにせよ、同じことである。青森の再処理工場や、日本のあちこちの原発のプールで、使い終えた核燃料棒がたまっている。
 あまり注目されていないが、元内閣官房参与で多摩大学大学院教授の田坂広志さん(62)がここ1年、訴えている案がある。すべての都道府県が、原発でつくられた電力を消費した量に応じて核廃棄物を受け入れる、というものだ。
 「極論に聞こえるかもしれません。しかし、原発の恩恵に浴してこれまで生産活動、経済活動をしてきたのだから受け入れてくださいというのは、本来、社会的な合意を形成しようとするときに、一番納得しやすい考え方ではないでしょうか。そうした法律をつくるべきです」
 田坂さんは福島第一原発の事故を踏まえて政府に「脱・原発依存」を提言した人だが、かつては放射性廃棄物の専門家として原発推進の立場にあった。地下深くに廃棄物を埋める処分計画が、多くの国で地元の反対にあって進まなくなるのを見てきた。ならば、例えば300年、安全に貯蔵し、もっと信頼される処分技術が開発されるのを待ったらどうか。そして、その長期貯蔵の場所は、全国各地が責任を持つべきではないか。そう考えるようになった。
     *
 ――なるほど。でも、現実的なんでしょうか。東京や大阪にできますか。
 「都道府県で協力しあって、共同で施設をつくることはあっていいと思います。法律にもそう書き込むべきです。ただ、最初からひとごとだと思って、政府がどうにかしろ、と言っている限り問題は解決しません。米軍基地を沖縄に押しつけるのと同じ構図になってしまいます」
 自分のごみであることを前提に、自治体の間で協力を模索する。実はこれ、一般のごみでは、よく見られることである。
 迷走に迷走を重ねてきたのが、東京都小金井市だ。老朽化したごみ焼却場が2007年に停止した頃からずっと、緊急措置だといって周りの自治体にお金を払ってごみを引き取ってもらっている。一時は周辺自治体との関係がギクシャクして、ごみ収集ができなくなる一歩手前まで行った。ようやく日野市、国分寺市と共同で焼却施設を造る方向になったが、建設予定地のある日野市では反対運動が起きている。
 でも、迷走も悪いことばかりではなかった。ごみが減ったのだ。1人あたりのごみの量は、同じような規模の241自治体のなかで最も少ない。ごみのリサイクル率もトップになった。
 家庭用生ごみ処理機の補助金を増やすなど市の取り組みがあった。しかし、「住民の意識が変わったことが大きい」と「生ごみ処理を考える小金井市民協議会」の加藤了教さん(73)は言う。ごみ問題が大騒ぎになって危機感が広がった。処理をよそに頼らざるをえない弱い立場も続く。「私たちは常に減量を迫られているのです」
     *
核のごみと一般のごみを一緒に論じるのは、乱暴かもしれない。危険性がまったく違う。一般ごみと違い、核のごみの処理は、もともと自治体の責任ではない。
 でも、一番大きな違いは別のところにあるのではないか。それは、一般のごみが身近にある「見えるごみ」であるのに対し、核のごみはどこか遠いところにある「見えないごみ」だということだ。
 福島の事故の後、多くの人にとって原子力のごみが見えかけたのは、宮城県や岩手県のがれきが県外に運び出されたときだろう。放射線量は低かったが、各地で拒否反応にあった。ましてや福島県のごみとなると、外に出すのはタブー化しているように見える。除染で取り除いた土などを集める中間貯蔵施設は、福島第一をぐるりと囲む土地を政府が買い、そこにつくる方向で話が進んでいる。30年以内に県外に最終処分場を設けて移すというが、場所のめどがあるわけではない。
 「どうせ帰れない」「中間貯蔵施設? 興味ないね」。原発立地の自治体から避難した人たちから、そんな声が聞かれる。彼らのあきらめに、政府も、そして私たちも依存している。
 これから福島第一の廃炉で、除染の土とは比べものにならない危険な廃棄物が出てくる。このままいくと原発周辺に長く留め置かれるのではないか。「そういう心配は、ないと言ったらうそになります」と、原発のある大熊町の渡辺利綱町長は言う。「東京電力の原発のごみ」は「福島のごみ」になりつつある。そして、全国の原発の中にあるごみは、もともと見えにくい。
 使用済み核燃料はごみではないんです、再処理してまた使えるんです、との言い訳はもう通用しない。その仕組みじたいが破綻(はたん)している。一方で、原発を止めても、ではすでにあるごみをどうするのかという問題が消えるわけではない。
 見えないごみを見つめる。ものごとは、そこからしか動き出さない。
 (編集委員)

最近のエントリー

カテゴリ

RSS Feed RSS Feed Atom Feed TopicXML アイコン
WebBoard

篠田江里子

篠田江里子

プロフィール

1950年東京都生まれ、横浜市、名古屋市育ち、慶応義塾大学卒業、結婚により札幌市へ。
専業主婦を経てローラアシュレイジャパンで社会人復帰、札幌・東京の店長やマネージャを務め、2006年退社。
東京赴任中、円より子主宰“女性のための政治スクール”に参加。民主党さっぽろ公募を経て2007年札幌市議会議員に初当選以来3期12年の活動。
各常任委員会委員長、予算・決算特別委員会委員長、冬季五輪招致・スポーツ振興調査特別委員会委員長、札幌市都市計画審議会委員歴任。
(家族:既婚の娘二人、母)

活動履歴

  • 札幌市DV(配偶者間暴力)被害者支援ボランティア
  • 札幌市食生活改善推進委員
  • 高齢社会を良くする女性の会、I女性会議、ゆいネット、BPW会員、SI札幌会員
  • 保護司・札幌認知症の人と家族の会
  • 環状通東商工会委員、すすきの観光協会理事
  • 国民民主党北海道女性委員長