2025年10月15日 保健福祉局 集団型支援拠点「よりどころ」について

2025.10.26
集団型支援拠点「よりどころ」について
1.「よりどころ」の利用状況ついて
・2020年(令和2年)に子ども未来局から保健福祉局に業務移管されて6年、当時、札幌市には15歳から65歳までの広義のひきこもり群は約2万人と言われていました。
・2022年決算特別委員会でもひきこもり支援事業について質問し、実態把握を求め、ひきこもりサポーター養成研修や常設の居場所など支援の充実を求めました。
・それから3年経ち、ひきこもりは長期化・高年齢化がさらに進み、8050問題に代表されるように、個人の問題から社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。
・ひきこもり状態にある方は、社会との関係性が希薄になり、孤立しがちであり、ひきこもり当事者や家族にとって、無理なく他者と交流できる機会を提供し、ゆるやかなつながりを築くための「居場所」が必要であり、「居場所」における人と人とのつながりは、本人が再び社会と関わるための安心感と土台となります。
・今年(令和7年)1月に厚生労働省から発行された 「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤」にもあるように、支援は当事者のペースに合わせることが重要であり、「居場所」は、就労支援や医療機関など、様々な支援機関への入り口となり得ます。
・「居場所」での交流を通じて、当事者が自らの関心や次の目標を見つけ、そこに繋がる多様な選択肢を提示することで、将来への希望を持てるよう支援します。
「居場所」は、強制的な就労訓練や社会参加を促すのではなく、本人の意思を尊重しながら、「自律」への道を共に歩むための伴走型支援の拠点としての役割を果たします。
・札幌市では、ひきこもり状態にある方やその家族が定期的に交流、情報交換できる「居場所」として、集団型支援拠点「よりどころ」を設置し、NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークへの委託により運営をしています。
・「よりどころ」ではひきこもり経験があるピアスタッフからの経験談に耳を傾け、利用者同士の情報交換ができる貴重な場であると認識しています。 
・新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、人との接触機会が減り、それが長期化することにより、ひきこもり当事者や家族にとって貴重な「居場所」である「よりどころ」への参加が制限されていたかと思いますが、ようやくコロナ禍から社会活動が戻り始めているかと思います。
質問1:近年における「よりどころ」の利用状況を伺います。

答弁概要
「よりどころ」では、当事者の会と家族の会を、それぞれ毎月4回開催している。
令和6年度の当事者会への利用者は延べ313名、家族の会への利用者は延べ231名
まだコロナ前までは戻ってはいないが、新型コロナウィルス感染症が落ちついた令和5年度以降、少しずつ利用者数は回復してきている。

2.「よりどころ」利用者を増やすための取組について
・ひきこもり当事者が、再び社会とのつながりを回復していく上で、安心して過ごせる「居場所」の存在は、何よりも重要です。それは、社会復帰や就労といった高い目標を課す場ではなく、ただ「そこに居る」ことが認められ、自分のペースで他者と関われる、いわば心の安全を確保できる場所です。
・「よりどころ」は、当事者会・家族の会の会場開催に加え、メタバースやZoomといったオンラインの選択肢を提供している点は、物理的・心理的に外出が困難な当事者へのアプローチとして非常に良い取り組みであると思います 。
・その一方で、情報が必要な当事者やご家族に十分に届いておらず、利用人数が増えているとまでは言えない状況があるようにも感じています。
質問2:「よりどころ」の利用者を増やすために、どのような取組をしているか、伺います。

答弁概要
より多くの方に参加していただくために、自宅にいながら「よりどころ」に参加できるメタバース開催など新たな取組を実施してきた。
また、ひきこもり支援においては家族への支援が重要であることから、今年度は家族の会では、ひきこもり経験者が現在に至るまでの出来事を、1年を通して話をする「よりどころ家族講話」や、ひきこもり地域支援センターの専門職員による「学習会」を行うったところ。
「よりどころ」の開催予定日を記載したチラシを、区役所や地域包括支援センター、介護予防センター、市内精神科医療機関などに配布しつつ、広報さっぽろにも開催日を掲 載するなど、周知に努めてきたところ。
今年度は、ピアスタッフも交えて周知内容を検討し、開催している様子や参加者の声などを記載した「よりどころ」リーフレットを作成し、関係機関へ配布した。
今後ともより多くの方に参加していただくため、周知に努めてまいりたい。

3. ショートタイムワークについて
・「よりどころ」では、昨年度からメタバース(仮想空間)を活用した当事者会を、月1 回程度開催しており、その中で、就労支援の取り組みを行っている。
・メタバースを活用した就労支援の取り組みとして、民間企業であるソフトバンク株式会社との連携により、企業が実際に行っている事務作業をメタバースの中で体験することができる、「ショートタイムワーク体験会」を開催しており、今年度も実施を計画していると聞いております。
・ショートタイムワークというのは、障がい、病気、子育て、介護など様々な理由で長時間働くことが困難な方々を対象に、短時間から、個々の能力や特性に合わせて業務を切り出して雇用するという、インクルーシブな働き方を実現するものです。
・ひきこもり当事者や、就労に不安を抱える若者、治療と仕事を両立したい方など、本市が支援を目指す方々にとっても、この「ショートタイムワーク」は、社会とのつながりを回復し、自信を取り戻すための貴重な第一歩となり得る、大きな可能性を秘めた制度であると考えます。
・本市とソフトバンク社との関係をさらに発展させ、市民一人ひとりの「働きたい」という願いに少しでも応えてほしいと考えます。
質問3:昨年度の「ショートタイムワーク体験会」の実績と、現在ショートタイムワークへ どのように取り組んでいるか伺います。

答弁概要
令和6年度については、「ショートタイムワーク体験会」を2回開催しており、体験会 終了後のフォローアップ会なども含めると、延べ33名の方に参加いただいた。
特に第2回体験会では、インターネットへの接続テストや、前回参加者から体験談を聞 くことなどを行う事前説明会を開催し、ひきこもり当事者が参加しやすい環境づくりに 配慮した改良を行って実施した。
令和7年度は、ひきこもり当事者の意向やペースに合わせながら、就労や社会参加の機会を広げていくことに協力的な企業を募集を、関係機関の協力を得ながら進めているところ。
以前公募があった協力企業に対しては、ソフトバンク株式会社とも連携しながひきこもり当事者が自信を取り戻すための貴重な一歩となるように、体験会の具体的な内容などを行う予定。

要望

・メタバースの中でショートタイムワークという新しい働き方を知り、体験することで、1歩前に進むことができれば、当事者も企業も社会参加につながるのは何より。
 1社でも多くの企業・団体が参加されることを期待します。
・居場所である「よりどころ」のどの会場でも中心的に活動しているピアサポーターの有効性については、全国各地で指摘をされており、国もこのピアサポーターの活用を重視をしております。
・ピアサポーターは同じ問題や境遇を経験した者同士による対等な関係性において生じる、その経験をもとにした支え合いの相互行為と言われ、リカバリー体験を活かした助言や傾聴、共に行動する支援は欠くことはできません。
・2021年より、厚生労働省は福祉サービスなどにおいてピアサポーターを配置した場合にピアサポーター体制加算を実施することで、活躍の場が広がってきます。
・高知県ひきこもりピアサポートセンターでは、居場所は常設化され、認定研修を受講したピアサポーターが相談業務にあたり、この体制加算が制度化されています。
・いまだに専門職の補助員的な待遇で、有償ボランティアにとどまっている「よりどころ」のピアサポーターを専門職と対等に位置づけて、ピアサポーターからピアスタッフとして就労し雇用できるようにすることが、いよいよ求められます。
・第3次の札幌市ひきこもり実態調査が始まります。推定値が2万人を超えることが想定され、特に親子の高年齢化は顕著になると考えられます。
・親の介護や親亡き後の不安など、生活面の悩みを抱えることも多く、情報交換と共に孤独・孤立に陥らないよう運営していただきたい。
・札幌市には結果を受けて、ひきこもり対策推進事業の拡大、中でもよりどころの常設化とピアサポーターの待遇改善に取組んでいただくことを求めます。
 

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篠田江里子

篠田江里子

プロフィール

1950年東京都生まれ、横浜市、名古屋市育ち、慶応義塾大学卒業、結婚により札幌市へ。

専業主婦を経てローラアシュレイジャパンで社会人復帰、札幌・東京の店長やマネージャを務め、2006年退社。

東京赴任中、円より子主宰“女性のための政治スクール”に参加。民主党さっぽろ公募を経て2007年札幌市議会議員に初当選以来5期目の活動。

各常任委員会委員長、予算・決算特別委員会委員長、
冬季五輪招致・スポーツ振興調査特別委員会委員長、
札幌市都市計画審議会委員、
議会運営委員会副委員長、

新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員会副委員長歴任。
今期、第42代札幌市議会副議長。
(家族:既婚の娘二人、母)

活動履歴

  • 札幌市DV(配偶者間暴力)被害者支援ボランティア
  • 札幌市食生活改善推進委員
  • 高齢社会を良くする女性の会、I女性会議、ゆいネット、BPW会員、SI札幌会員
  • 保護司・札幌認知症の人と家族の会
  • 環状通東商工会委員、すすきの観光協会理事
  • 元立憲民主女性議員ネットワーク会長