集団型支援拠点「よりどころ」について
1.「よりどころ」の利用状況ついて
・2020年(令和2年)に子ども未来局から保健福祉局に業務移管されて6年、当時、札幌市には15歳から65歳までの広義のひきこもり群は約2万人と言われていました。
・2022年決算特別委員会でもひきこもり支援事業について質問し、実態把握を求め、ひきこもりサポーター養成研修や常設の居場所など支援の充実を求めました。
・それから3年経ち、ひきこもりは長期化・高年齢化がさらに進み、8050問題に代表されるように、個人の問題から社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。
・ひきこもり状態にある方は、社会との関係性が希薄になり、孤立しがちであり、ひきこもり当事者や家族にとって、無理なく他者と交流できる機会を提供し、ゆるやかなつながりを築くための「居場所」が必要であり、「居場所」における人と人とのつながりは、本人が再び社会と関わるための安心感と土台となります。
・今年(令和7年)1月に厚生労働省から発行された 「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤」にもあるように、支援は当事者のペースに合わせることが重要であり、「居場所」は、就労支援や医療機関など、様々な支援機関への入り口となり得ます。
・「居場所」での交流を通じて、当事者が自らの関心や次の目標を見つけ、そこに繋がる多様な選択肢を提示することで、将来への希望を持てるよう支援します。
「居場所」は、強制的な就労訓練や社会参加を促すのではなく、本人の意思を尊重しながら、「自律」への道を共に歩むための伴走型支援の拠点としての役割を果たします。
・札幌市では、ひきこもり状態にある方やその家族が定期的に交流、情報交換できる「居場所」として、集団型支援拠点「よりどころ」を設置し、NPO法人レター・ポスト・フレンド相談ネットワークへの委託により運営をしています。
・「よりどころ」ではひきこもり経験があるピアスタッフからの経験談に耳を傾け、利用者同士の情報交換ができる貴重な場であると認識しています。 
・新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、人との接触機会が減り、それが長期化することにより、ひきこもり当事者や家族にとって貴重な「居場所」である「よりどころ」への参加が制限されていたかと思いますが、ようやくコロナ禍から社会活動が戻り始めているかと思います。
質問1:近年における「よりどころ」の利用状況を伺います。

答弁概要
「よりどころ」では、当事者の会と家族の会を、それぞれ毎月4回開催している。
令和6年度の当事者会への利用者は延べ313名、家族の会への利用者は延べ231名
まだコロナ前までは戻ってはいないが、新型コロナウィルス感染症が落ちついた令和5年度以降、少しずつ利用者数は回復してきている。

2.「よりどころ」利用者を増やすための取組について
・ひきこもり当事者が、再び社会とのつながりを回復していく上で、安心して過ごせる「居場所」の存在は、何よりも重要です。それは、社会復帰や就労といった高い目標を課す場ではなく、ただ「そこに居る」ことが認められ、自分のペースで他者と関われる、いわば心の安全を確保できる場所です。
・「よりどころ」は、当事者会・家族の会の会場開催に加え、メタバースやZoomといったオンラインの選択肢を提供している点は、物理的・心理的に外出が困難な当事者へのアプローチとして非常に良い取り組みであると思います 。
・その一方で、情報が必要な当事者やご家族に十分に届いておらず、利用人数が増えているとまでは言えない状況があるようにも感じています。
質問2:「よりどころ」の利用者を増やすために、どのような取組をしているか、伺います。

答弁概要
より多くの方に参加していただくために、自宅にいながら「よりどころ」に参加できるメタバース開催など新たな取組を実施してきた。
また、ひきこもり支援においては家族への支援が重要であることから、今年度は家族の会では、ひきこもり経験者が現在に至るまでの出来事を、1年を通して話をする「よりどころ家族講話」や、ひきこもり地域支援センターの専門職員による「学習会」を行うったところ。
「よりどころ」の開催予定日を記載したチラシを、区役所や地域包括支援センター、介護予防センター、市内精神科医療機関などに配布しつつ、広報さっぽろにも開催日を掲 載するなど、周知に努めてきたところ。
今年度は、ピアスタッフも交えて周知内容を検討し、開催している様子や参加者の声などを記載した「よりどころ」リーフレットを作成し、関係機関へ配布した。
今後ともより多くの方に参加していただくため、周知に努めてまいりたい。

3. ショートタイムワークについて
・「よりどころ」では、昨年度からメタバース(仮想空間)を活用した当事者会を、月1 回程度開催しており、その中で、就労支援の取り組みを行っている。
・メタバースを活用した就労支援の取り組みとして、民間企業であるソフトバンク株式会社との連携により、企業が実際に行っている事務作業をメタバースの中で体験することができる、「ショートタイムワーク体験会」を開催しており、今年度も実施を計画していると聞いております。
・ショートタイムワークというのは、障がい、病気、子育て、介護など様々な理由で長時間働くことが困難な方々を対象に、短時間から、個々の能力や特性に合わせて業務を切り出して雇用するという、インクルーシブな働き方を実現するものです。
・ひきこもり当事者や、就労に不安を抱える若者、治療と仕事を両立したい方など、本市が支援を目指す方々にとっても、この「ショートタイムワーク」は、社会とのつながりを回復し、自信を取り戻すための貴重な第一歩となり得る、大きな可能性を秘めた制度であると考えます。
・本市とソフトバンク社との関係をさらに発展させ、市民一人ひとりの「働きたい」という願いに少しでも応えてほしいと考えます。
質問3:昨年度の「ショートタイムワーク体験会」の実績と、現在ショートタイムワークへ どのように取り組んでいるか伺います。

答弁概要
令和6年度については、「ショートタイムワーク体験会」を2回開催しており、体験会 終了後のフォローアップ会なども含めると、延べ33名の方に参加いただいた。
特に第2回体験会では、インターネットへの接続テストや、前回参加者から体験談を聞 くことなどを行う事前説明会を開催し、ひきこもり当事者が参加しやすい環境づくりに 配慮した改良を行って実施した。
令和7年度は、ひきこもり当事者の意向やペースに合わせながら、就労や社会参加の機会を広げていくことに協力的な企業を募集を、関係機関の協力を得ながら進めているところ。
以前公募があった協力企業に対しては、ソフトバンク株式会社とも連携しながひきこもり当事者が自信を取り戻すための貴重な一歩となるように、体験会の具体的な内容などを行う予定。

要望

・メタバースの中でショートタイムワークという新しい働き方を知り、体験することで、1歩前に進むことができれば、当事者も企業も社会参加につながるのは何より。
 1社でも多くの企業・団体が参加されることを期待します。
・居場所である「よりどころ」のどの会場でも中心的に活動しているピアサポーターの有効性については、全国各地で指摘をされており、国もこのピアサポーターの活用を重視をしております。
・ピアサポーターは同じ問題や境遇を経験した者同士による対等な関係性において生じる、その経験をもとにした支え合いの相互行為と言われ、リカバリー体験を活かした助言や傾聴、共に行動する支援は欠くことはできません。
・2021年より、厚生労働省は福祉サービスなどにおいてピアサポーターを配置した場合にピアサポーター体制加算を実施することで、活躍の場が広がってきます。
・高知県ひきこもりピアサポートセンターでは、居場所は常設化され、認定研修を受講したピアサポーターが相談業務にあたり、この体制加算が制度化されています。
・いまだに専門職の補助員的な待遇で、有償ボランティアにとどまっている「よりどころ」のピアサポーターを専門職と対等に位置づけて、ピアサポーターからピアスタッフとして就労し雇用できるようにすることが、いよいよ求められます。
・第3次の札幌市ひきこもり実態調査が始まります。推定値が2万人を超えることが想定され、特に親子の高年齢化は顕著になると考えられます。
・親の介護や親亡き後の不安など、生活面の悩みを抱えることも多く、情報交換と共に孤独・孤立に陥らないよう運営していただきたい。
・札幌市には結果を受けて、ひきこもり対策推進事業の拡大、中でもよりどころの常設化とピアサポーターの待遇改善に取組んでいただくことを求めます。
 
10.7
2・ アドトラック対策について
荷台部分などに広告を掲示・設置し、公道を走行しながら宣伝活動を行う車両、いわゆるアドトラックについて伺います。

・法律や条例では「広告宣伝車」と呼ばれており、トラックの荷台に大きな広告パネルやLEDディスプレイを搭載しているものが最も一般的で、車体全体を広告でラッピングしたバスや乗用車なども含まれる場合があります。
・アドトラックは、繁華街や駅前など、人通りの多い場所を走行することで、動く屋外広告として多くの人目にふれさせることを目的としており、
その多くが、大きな文字や鮮やかなデザインを車に施し、夜間には照明やLEDを点滅し、また、大音量の音楽やナレーションをスピーカーで流しているものもありました。
・近年、トラック荷台の大型スクリーンに高収入をうたう風俗関係の求人広告を表示し、札幌市の都心部、札幌駅前北口、南口から大通、すすきの、中島公園周辺において、このアドトラックが低速で繰り返し走行する姿を多く目にするようになりました。
・昼夜を問わず繁華街を走行し、その派手なラッピングや照明、音量は、多くの市民や国内外からの観光客にとっても決して心地よいものではありません。
・また、派手なアドトラックの走行は他の運転手の視界妨害や注意力の散漫を引き起こす危険性などが憂慮されます。

質問1:札幌市においてもこのようなアドトラックが走行している現状に対し、市民からどのような声が寄せられ、札幌市としてどのように受け止めているのか。また、アドトラックの広告や音楽を屋外広告物条例で規制することができないのか伺います。

答弁概要
風俗関連のアドトラックは、大都市を中心に全国的に問題となっており、本市においても市民から不快感や嫌悪感を訴える声や規制を求める声が年々増えており、札幌市としても何らかの対策が必要と考えている。
一方で、例えばホストクラブなどの風俗関連の広告であったとしても、広告内容を規制することについては、憲法が保障する「表現の自由」との兼ね合いから、極めて慎重な判断を要するものであり、また、音楽については、屋外広告物法の規制対象とはなっていないことから、法律の規制の範囲内で定めており、屋外広告物条例により規制することができないのが現状である。

・表現の自由の保障から、屋外広告物条例による規制が極めて難しいことは理解しましたが、このアドトラックの問題、特に風俗関連のアドトラックについては札幌市だけが抱えるものではなく、全国の主要都市で課題となっています。
・東京都では、良好な景観の維持や交通環境への配慮から、2024年6月から、都内ナンバーに加え、都内を走行する都外ナンバーのアドトラックについても屋外広告物条例の許可対象とし、更に、アドトラック事業者に対しては、東京都への許可申請に先立ち、公益社団法人東京屋外広告協会へ、デザインの自主審査を求める仕組みを導入しています。
・また、福岡市では、ほぼ1年かけて実態調査を行っており、4月から4か月間実施の調査結果を9月始めに明らかにしており、この調査結果では延べ202台が確認され、このうち風俗関連の広告は97%と聞いております。
・そして福岡市では、良好な景観の形成、公衆に対する危害の防止、そして市民や国内外からの観光客にとっての快適な環境を守るための規制強化にむけて動き出しています。

質問2:札幌市では、これまでアドトッラック対策として、どのような検討を行ってきたのか伺います。

答弁概要
札幌市では、これまで、東京都が導入した仕組みを検証するとともに、他の政令市とも情報交換を行うなど、アドトラック対策について、調査・研究を行ってきた。
また、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、いわゆる「風営法」など、屋外広告物法令以外の法令による規制の可能性について、警察等とも意見交換を行ってきたが、現時点で具体的な手法を見出せていない状況である。

・昨年より首都圏の4都県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、5政令市(横浜市、川崎市、千葉市、さいたま市、相模原市)では、首脳会議での合意に基づき、6回にわたりアドトラックの屋外広告物規制のあり方について検討を行っています。
・検討の結果、アドトラックの規制にあたっては、屋外広告物条例や制度に事業者等の理解が十分ではないことから、連携して広報の取組みを行い、併せて、アドトラックで使用されている灯火装置に係る「道路運送車両の保安基準」の順守に関する普及啓発について、国に要望を行っています。
・これは首都圏だけの問題ではなく、繁華街を抱える大都市に共通する課題であり、都市の有効な景観形成や公共に対する危害を防止するためには、他都市と連携し、国への働きかけも必要と考えます。
・先程も例示したように福岡市でも、東京都「屋外広告物条例」の改正を参考にしながら、規制強化の検討を始めていると聞いています。
 札幌市においても、市民の安心・安全、そして国際観光都市としての景観をもまるため、実効性のある対策を進めていくべきです。

質問3:アドトラックの問題に対し、札幌市として、今後どの様に取り組んでいく考えなのか伺います。

答弁概要
繰り返しとなるが、法令による規制は極めて慎重な判断を要することから、先ずは、アドトラック事業者に対し、札幌市に寄せられた市民の声を伝えるなどして、少しでも市民感情に配慮した広告となるよう働きかけを行っていきたい。  
また、より効果的な手法について、同じ問題を抱える他の政令市とも十分に情報交換を行うなど、引き続き調査・研究を行ってまいりたい。 

要望
・GX特区を目指す札幌のポテンシャルの高さは、「都市と自然が調和した世界でも類を見ない魅力的な街」とあります。
世界中からGXに関する資金や人材、情報を集積しようとする都市の姿として、不特定多数の人が見ることに配慮したデザインであるとは思えない風俗関連のアドトラックが昼夜問わず走行する札幌がはたして魅力的なまちにふさわしいのか考えると、とても残念だし、むなしく思います。
市民も観光客も大人もこどもも安心して街歩きができる札幌都心に向けて、共に取組んでいきましょう。


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篠田江里子

篠田江里子

プロフィール

1950年東京都生まれ、横浜市、名古屋市育ち、慶応義塾大学卒業、結婚により札幌市へ。

専業主婦を経てローラアシュレイジャパンで社会人復帰、札幌・東京の店長やマネージャを務め、2006年退社。

東京赴任中、円より子主宰“女性のための政治スクール”に参加。民主党さっぽろ公募を経て2007年札幌市議会議員に初当選以来5期目の活動。

各常任委員会委員長、予算・決算特別委員会委員長、
冬季五輪招致・スポーツ振興調査特別委員会委員長、
札幌市都市計画審議会委員、
議会運営委員会副委員長、

新型コロナウイルス感染症対策調査特別委員会副委員長歴任。
今期、第42代札幌市議会副議長。
(家族:既婚の娘二人、母)

活動履歴

  • 札幌市DV(配偶者間暴力)被害者支援ボランティア
  • 札幌市食生活改善推進委員
  • 高齢社会を良くする女性の会、I女性会議、ゆいネット、BPW会員、SI札幌会員
  • 保護司・札幌認知症の人と家族の会
  • 環状通東商工会委員、すすきの観光協会理事
  • 元立憲民主女性議員ネットワーク会長