10月15日保健福祉局「自己採取HPV検査事業について」
2025.11.01
自己採取HPV検査事業について
1. HPV自己採取検査の実施状況
・引き続き、子宮頸がん検診未受診対策事業として実施しているHPV自己採取検査について伺う。
・子宮頸がん検診はがん検診の優等生だと言われている。
20歳以上の2年に1回の検診で、検診受診者の死亡率を減らせることが、科学的に証明されており、早期がんだけでなく、前がん病変の段階でも見つけることができ、がんの予防が可能です。
・厚生労働省人口動態統計・年齢調整後死亡率によれば、1958年には人口10万人あたりの子宮頸がんによる死者は5名でしたが、その後、衛生状況の改善と早期発見により、1970年以降ワクチンなしで3名以下と死亡率低下を実現しており、早期発見し治療を受けた方の5年後の生存率は95.7%と予後の良いがんと言われている。
・しかし厚生労働省の国民生活基礎調査によると、札幌市の子宮頸がん検診の受診率は2022年(令和4年)で40.7%であり、国が目標としている50%に達していない。
・2022年度(令和4年度)に実施した札幌市の調査では、未受診の理由として、受診そのものに抵抗があることや、仕事や育児で忙しくて受診する時間がとれないといった回答があった。
・そこで札幌市では2022年度(令和4年度)より、子宮頸がん検診の未受診者対策として25歳で過去3年間、札幌市の子宮頸がん検診の受診歴のない女性を対象に、自宅で簡単に検査ができる検査キットを使ったHPV自己採取検査を導入した。
Q1:導入から現在3年が経過したところですが、これまでの実施状況について伺う。
答弁
・令和4年度〜令和6年度の3年間での合計実績では、対象者23,405名のうち申し込みが3,795名からあり、そのうち2,937名が検査を実施、実施割合は約77%だった。
・検査実施者2,937名のうち562名がHPV陽性であり、陽性者の割合は約2割だった。HPV陽性者には電話やメール等でその後の子宮頸がん検診の受診予定状況を確認しており、276名が子宮頸がん検診受診済みもしくは受診予定と把握している。
2. 定期的子宮がん検診につなげる取組
・2023年予算委員会で質問した際、秋野部長の答弁で、初年度対象である過去3年間札幌市の子宮頸がんの受診歴のない25歳の方が7,750人、その中の2割の方が申込みをされ、実際に969人が自己採取検査をされた。その中で170人が陽性でしたので、その方たちには子宮頸がん検診をお勧めいただいた。
・その中には、実際に治療を必要とする方もいらしたと思いますが、多くは定期的な受診による経過観察となった方など様々だったと思います。しかし、一旦陽性になったということで、検診の大切さを本当に身をもって知っていただけたと思います。
・3年間の総申込者の検査実施割合でいうと、近隣の市町村である江別市では、申込者の68%が検査を実施していると聞いているが、札幌市では申込者の77%が検査の実施をしており高い割合であると思う。
・しかしながら、検査の申し込みをして自己採取キットを受け取ったものの自己採取した検体を返送していない方が実際に3年間で858名、平均すると一年では約280名だったとのこと、また、陽性者がその後、子宮頸がん検診を受診したのか否かの把握については約半数にとどまっている。
質問2:HPV自己採取検査の対象年齢でもあるにも関わらず、検査を実施しなかった方や、検査結果が陰性であった方を含め、一人でも多くの方に受診していただけるように検査の必要性を伝え、定期的な子宮がん検診の受診につなげるように促すことが重要であると考えるが、その取組についてはどのように行っていくか、伺う。
答弁
・検査の申し込みをしたものの、検体を返送していない方が約2割いるため、直接架電することや複数回文書とメールを送付するなど、様々な手段を活用し、効果的な受診勧奨を図っていく。
・HPV陽性となった方には、結果通知と合わせて札幌市の子宮頸がん検診を速やかに受けていただけるよう曜日や時間帯を変えて繰り返し受診勧奨を行うことで、子宮頸がんの早期発見につなげる。
・HPV陰性となった方にも子宮頸がんの病気の特徴や定期検診の重要性についてリーフレットなどを用いてわかりやすく伝えることで、引き続き検診を受けていただけるよう促していく。
・ショッピングモールにて企業と連携した啓発イベント、雑誌やSNSの活用など様々な手法を駆使し、実際に検査をされた方の声や自己負担なくHPV自己採取検査が可能であることをしっかり伝え、一人でも多くの方にHPV自己採取検診を受けていただくことで、子宮頸がん検診の受診率向上につなげるよう努めていく。
・せっかくHPV自己採取検査を選択したのに、チャンスを活かしきれないのは大変もったいない。実際にHPV自己採取検査をされ、治療につながった方のリアルな感想なども伝えていただきたい。またHPV自己採取検査を自分でするとなると、Amazon等ネット販売でも約7,000円かかりますが、札幌市では無料でできる。この費用対効果もしっかり伝えていただきたい。
3. HPV検査単独法について
・また、これまで市町村が実施する子宮頸がん検診については、厚生労働省の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、20歳以上の女性を対象に2年に1回の細胞診を行うことが推奨されてきました。
・2024年(令和6年)4月からはこの指針に新たな検査方法であるHPV検査単独法が位置づけられたところです。
・HPV検査単独法は、子宮頸がん検診の新しい方法で、30歳以上の女性を対象に、ヒトパピローマウイルスに感染しているかを検査します。感染が陽性の場合は、採取した検体を使って細胞診を行います。陰性の場合は5年後に再検査をします。(HPV陽性で細胞診が陰性の場合は翌年度に追跡検査を行います。)
・この方法は、従来の検査方法よりも検査間隔が長く、受診者の負担を軽減し受診率向上に繋がることが期待され、すでに政令市では横浜市で導入されています。
Q3:子宮頸がん検診の新しい方法であるHPV検査単独法の導入についてどのようにお考えか、お伺いいたします。
答弁
・新しい検査方法であるHPV検査単独法は、子宮頸がんへの罹患リスクである前段階のHPV感染の発見が可能になり、陰性者は検診間隔を最大で5年ごとに延長できることが最大のメリット。
・しかし検査結果によって次回の検査時期や検査内容が異なるなど複雑性があり、市や検査実施機関においては高い精度で管理する体制の構築が必要となるため、一部医療機関から導入は時期尚早といった意見も寄せられており、慎重な検討が必要な状況。
・そのため、引き続き他政令市や国の動向を注視し、関係機関等の情報を集めつつ検討を進めてまいりたい。
要望
・国立がん研究センターがん情報による女性に多いがんの中で子宮頸がんは、9万人を超える乳がんや6万人を超える大腸がん、肺がん、胃がん、脾臓がん、悪性リンパ腫、卵巣がんに続く罹患率であり、日本では年間1万人が発症、約3,000人が死亡していますが、亡くなる8割は50歳以上と言われてる。
・近年は20〜30代の発症が増えていますが、若い方が多数亡くなっているわけではなく、検診による早期発見により、重症化のリスクが下がることが明らかになっている。
・しかし、若い20代の女性に聞くと産婦人科や婦人科専門医に出向き行う子宮がん検診は、ハードルが高いと言います。ましてや学業や仕事、育児等で忙しくなり、時間的制約があり、通院がむつかしい20代から30代の女性にとって、なかなか定期検診に行くことはもっと難しいと聞きます。
・このように数年間検診を受ける機会がなかった25歳の女性たちには、まず「HPV自己採取検査」実施をきっかけに子宮頸がんのリスクに気づいていただきたい。
・近年の無作為比較試験では、自己採取HPV検査をうけると、健康意識が高まるだけでなく、HPV検査を含む子宮頸がん検診の受診率を高めるとの報告もある。
・札幌市にはその際にはイギリスで高い受診率を保つ手法コール・リコール再勧奨の実施を行い、ひとりでも多くの女性たちを検診に結び付けていただきたい。
・医療者によるHPV検査単独法については、今後、国や各自治体でシステム標準化に向けた検討が行われるが、女性たちにとり陰性であれば5年後で良いとなれば、経済的負担も心理的負担も軽減されると考える。
・米国では子宮頸がんの50%は一度も検診をうけなかった人から、10%は5年以内に検診を受けていない人から発生しているとの報告あり、検診未受診に対する対策は大変重要なので、子宮がん検診、HPV自己採取検査ともしっかり対象の女性たちに届くよう取組んでいただくことを求める。
・ちなみに子宮頸がんはワクチンを接種するだけでは防げず、検診は欠くことができないことを改めて申し述べ、終わる。